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花と癒しの島、六連島

2021.08.25

TOP > 関門ON AIRナビ > 花と癒しの島、六連島

下関駅からもほど近い渡船乗り場から、ほんの20分ほどで行ける小さな島がある。

響灘の海にぽっかりと浮かぶ六連島

 

『花の島』とも呼ばれる【六連島】。

島といえば海で泳いだり美味しい地元飯を堪能したり、バカンスを楽しむイメージがあるかもしれない。しかし、六連島は決して観光の島ではない。

今は、まだ。

そう感じさせてくれる、ポテンシャルを秘めた島であることは間違いない。まだまだこれから魅力が増しそうな六連島の、今だからこそ味わえる、素朴で穏やかで自分だけの特別な場所にしておきたい、そんな愛しい六連島をこっそりとご紹介したい。

 

六連島自治会長の武島さん

 

まず島について詳しくおしえてくださったのが、六連島の自治会長さんである武島さんだ。見るからにやさしいおじいちゃんだが、お話ししていても島の空気を感じるような、あたたかさと凪のようなゆったりとした雰囲気を纏っている。

 

島の郵便屋さんでもある武島さんは、島の住民に郵便物を運んでいる

 

武島さんは島の出身で、勤め先の街の郵便局まで長年通っていたこともあり、今でも島の郵便物を委託され配達している。小さな島の郵便屋さん。なんてかわいらしい。

そんな武島さんの話によると、六連島はかつて山口県の春キャベツの生産地としてかなり栄えていたそうだ。40年位前までは、島のほとんどの土地がキャベツ畑だったという。

羽振りもよかったため豪快な男性陣が自分の船で夜な夜な街に繰り出す、なんていう夢物語のような話も現実にあったそうだが、それも今は昔。キャベツに病気が発生して痛みが出だしたことで、うまく育たなくなってしまったのだ。さらに、島の高齢化も重なり、キャベツ農業は次第に衰退していってしまう。

そこで始まったのが、菊の栽培だった。だんだん需要があるということがわかり、菊の季節以外に他の品種も植えるように。島の気候が花の栽培に適していたのか、今ではトルコキキョウ、ガーベラ、ひまわり、カーネーションなどが年中咲き誇る、一大生産地となった。

 

美しく咲くトルコキキョウ

 

せっかくなのでその花の栽培地も見せていただいた。案内してくださったのは生産者である植村さん。この広大なハウスの花たちを奥様と二人で育てているという。

 

島で花を育てている植村さん

 

少し強面ではあるが、忙しい中お話を聞かせてくださり、こちらもとてもあたたかい方だった。やはり島で生活すると、せかせかしたりイライラしたりすることがなくてやさしい人間になれるのだろうか。自分のことは棚に上げて、あの人もこの人も六連島に住めばいいのに、なんて思ってしまう。

植村さんのやさしさが垣間見えた瞬間がもう一つ、それは飼っている山羊を見せてくれたとき。雑草を食べてもらうために飼っているそうだが、「グルメなんだよ」と少し困った顔をしながら山羊のところに連れて行ってくれた。山羊さんは、植村さんが手にした出荷できないガーベラをむしゃむしゃ。とてもおいしそうに食べている・・・

なんて贅沢な!

 

草よりガーベラがお気に入りの山羊は、植村さんから奪い取るようにガーベラをほおばっていた

 

グルメで草よりガーベラを好む山羊たちを愚痴りながらも、やさしい顔でガーベラを食べさせている植村さんの横顔が印象的だった。

高齢化や、山の上にあるため水が少ないなど様々な問題を抱えつつも、大切に大切に花を育てている植村さん。美しい色彩の花を見ただけで、どれだけ大切に育てられているかわかる。

 

出荷前に冷蔵庫で保管される色とりどりの花たち

 

「3月4月の春がやっぱり一番盛況やけね。その頃にまた来たらいいよ」忙しいから、とインタビューを切り上げた植村さんだったが、結局最後までやさしかった。

 

六連島に住む男性陣のやさしさに触れ「島に住む人、いいかも」なんてすっかりほだされた私だが、六連島の魅力は住む人だけにおさまらない。例えば六連島のシンボルである、『六連島灯台』。

 

150周年を迎える、白く美しい六連島灯台

 

なんと今年150周年を迎え、重要文化財にも指定されている由緒ある灯台だ。10月には式典も予定され、島全体で地域おこしのようなことができたら、と武島さんは考えている。150年前と変わらない造形を今も変わらず見られるというのは、なんてロマンがあるんだろう。六連島灯台が見つめてきた150年に思いを馳せていたら、平気で一日過ぎていそうだ。

そう、そうなのだ。

 

高台にある神社から島を見守るようにたたずむ狛犬

 

そんな風に六連島では、花を見てはうっとりして時間を忘れ、高台に神社を見つけてはその景色に見とれて時間を忘れ、島の至ることろで心地よい風が吹いているので数分おきに立ち止まってしばらく身を任せていたくなる。

 

島のあちこちから海が見渡せ、行き交う船を眺めることができる

 

とにかくゆっくりとそこに留まっていたくなるのだが、いかんせん、宿がないのだ。いや、宿どころか、実は島にお店はなく、自動販売機が一台あるくらい。昔は売店もあり、民宿も2軒あったそうだが、高齢化もあり今は閉じてしまった。

昔は人口も200人くらいおり、30年位前までは分校もあったそうだが今はそれすらない。現在の人口は75人くらいだそう。世帯でいうと30ちょっと。

とはいえ、さみしいことばかりではない。今、六連島は島を盛り上げるために動き出している。8月からは、地域おこし協力隊を迎え、島で生活するそうだ。島民も協力体制が整っているということで、活性化が期待される。

 

船から見た、少しずつ小さくなっていく六連島

 

今はまだ、観光の島ではないけれど。私は六連島にポテンシャルしか感じない。売れる前からずっと好きだったのに、メジャーになってみんなが「いいよね」って言って少しさみしい気持ちになる、そんな予感がするのだ。

そう、今回の記事は、「だから言ったでしょ!」と言いたいがための自己満足でもある。島にみんなが押し寄せる前に、今だからこその“特別感”を、この記事を読んでくれたあなたにはどうか味わってほしい。

 

TEXT
忽那恵
関門オンエアでライティングを担当。

#下関市

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響灘の海にぽっかりと浮かぶ六連島

 

『花の島』とも呼ばれる【六連島】。

島といえば海で泳いだり美味しい地元飯を堪能したり、バカンスを楽しむイメージがあるかもしれない。しかし、六連島は決して観光の島ではない。

今は、まだ。

そう感じさせてくれる、ポテンシャルを秘めた島であることは間違いない。まだまだこれから魅力が増しそうな六連島の、今だからこそ味わえる、素朴で穏やかで自分だけの特別な場所にしておきたい、そんな愛しい六連島をこっそりとご紹介したい。

 

六連島自治会長の武島さん

 

まず島について詳しくおしえてくださったのが、六連島の自治会長さんである武島さんだ。見るからにやさしいおじいちゃんだが、お話ししていても島の空気を感じるような、あたたかさと凪のようなゆったりとした雰囲気を纏っている。

 

島の郵便屋さんでもある武島さんは、島の住民に郵便物を運んでいる

 

武島さんは島の出身で、勤め先の街の郵便局まで長年通っていたこともあり、今でも島の郵便物を委託され配達している。小さな島の郵便屋さん。なんてかわいらしい。

そんな武島さんの話によると、六連島はかつて山口県の春キャベツの生産地としてかなり栄えていたそうだ。40年位前までは、島のほとんどの土地がキャベツ畑だったという。

羽振りもよかったため豪快な男性陣が自分の船で夜な夜な街に繰り出す、なんていう夢物語のような話も現実にあったそうだが、それも今は昔。キャベツに病気が発生して痛みが出だしたことで、うまく育たなくなってしまったのだ。さらに、島の高齢化も重なり、キャベツ農業は次第に衰退していってしまう。

そこで始まったのが、菊の栽培だった。だんだん需要があるということがわかり、菊の季節以外に他の品種も植えるように。島の気候が花の栽培に適していたのか、今ではトルコキキョウ、ガーベラ、ひまわり、カーネーションなどが年中咲き誇る、一大生産地となった。

 

美しく咲くトルコキキョウ

 

せっかくなのでその花の栽培地も見せていただいた。案内してくださったのは生産者である植村さん。この広大なハウスの花たちを奥様と二人で育てているという。

 

島で花を育てている植村さん

 

少し強面ではあるが、忙しい中お話を聞かせてくださり、こちらもとてもあたたかい方だった。やはり島で生活すると、せかせかしたりイライラしたりすることがなくてやさしい人間になれるのだろうか。自分のことは棚に上げて、あの人もこの人も六連島に住めばいいのに、なんて思ってしまう。

植村さんのやさしさが垣間見えた瞬間がもう一つ、それは飼っている山羊を見せてくれたとき。雑草を食べてもらうために飼っているそうだが、「グルメなんだよ」と少し困った顔をしながら山羊のところに連れて行ってくれた。山羊さんは、植村さんが手にした出荷できないガーベラをむしゃむしゃ。とてもおいしそうに食べている・・・

なんて贅沢な!

 

草よりガーベラがお気に入りの山羊は、植村さんから奪い取るようにガーベラをほおばっていた

 

グルメで草よりガーベラを好む山羊たちを愚痴りながらも、やさしい顔でガーベラを食べさせている植村さんの横顔が印象的だった。

高齢化や、山の上にあるため水が少ないなど様々な問題を抱えつつも、大切に大切に花を育てている植村さん。美しい色彩の花を見ただけで、どれだけ大切に育てられているかわかる。

 

出荷前に冷蔵庫で保管される色とりどりの花たち

 

「3月4月の春がやっぱり一番盛況やけね。その頃にまた来たらいいよ」忙しいから、とインタビューを切り上げた植村さんだったが、結局最後までやさしかった。

 

六連島に住む男性陣のやさしさに触れ「島に住む人、いいかも」なんてすっかりほだされた私だが、六連島の魅力は住む人だけにおさまらない。例えば六連島のシンボルである、『六連島灯台』。

 

150周年を迎える、白く美しい六連島灯台

 

なんと今年150周年を迎え、重要文化財にも指定されている由緒ある灯台だ。10月には式典も予定され、島全体で地域おこしのようなことができたら、と武島さんは考えている。150年前と変わらない造形を今も変わらず見られるというのは、なんてロマンがあるんだろう。六連島灯台が見つめてきた150年に思いを馳せていたら、平気で一日過ぎていそうだ。

そう、そうなのだ。

 

高台にある神社から島を見守るようにたたずむ狛犬

 

そんな風に六連島では、花を見てはうっとりして時間を忘れ、高台に神社を見つけてはその景色に見とれて時間を忘れ、島の至ることろで心地よい風が吹いているので数分おきに立ち止まってしばらく身を任せていたくなる。

 

島のあちこちから海が見渡せ、行き交う船を眺めることができる

 

とにかくゆっくりとそこに留まっていたくなるのだが、いかんせん、宿がないのだ。いや、宿どころか、実は島にお店はなく、自動販売機が一台あるくらい。昔は売店もあり、民宿も2軒あったそうだが、高齢化もあり今は閉じてしまった。

昔は人口も200人くらいおり、30年位前までは分校もあったそうだが今はそれすらない。現在の人口は75人くらいだそう。世帯でいうと30ちょっと。

とはいえ、さみしいことばかりではない。今、六連島は島を盛り上げるために動き出している。8月からは、地域おこし協力隊を迎え、島で生活するそうだ。島民も協力体制が整っているということで、活性化が期待される。

 

船から見た、少しずつ小さくなっていく六連島

 

今はまだ、観光の島ではないけれど。私は六連島にポテンシャルしか感じない。売れる前からずっと好きだったのに、メジャーになってみんなが「いいよね」って言って少しさみしい気持ちになる、そんな予感がするのだ。

そう、今回の記事は、「だから言ったでしょ!」と言いたいがための自己満足でもある。島にみんなが押し寄せる前に、今だからこその“特別感”を、この記事を読んでくれたあなたにはどうか味わってほしい。

 

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忽那恵
関門オンエアでライティングを担当。

「関門ON AIRナビ」は、放送で取り上げた地域の旬なものや地元の人だけが知っているようなことを紹介するウェブマガジンです。さあ、新しい体験の旅に出かけましょう!

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花と癒しの島、六連島

下関駅からもほど近い渡船乗り場から、ほんの20分ほどで行ける小さな島がある。

響灘の海にぽっかりと浮かぶ六連島

 

『花の島』とも呼ばれる【六連島】。

島といえば海で泳いだり美味しい地元飯を堪能したり、バカンスを楽しむイメージがあるかもしれない。しかし、六連島は決して観光の島ではない。

今は、まだ。

そう感じさせてくれる、ポテンシャルを秘めた島であることは間違いない。まだまだこれから魅力が増しそうな六連島の、今だからこそ味わえる、素朴で穏やかで自分だけの特別な場所にしておきたい、そんな愛しい六連島をこっそりとご紹介したい。

 

六連島自治会長の武島さん

 

まず島について詳しくおしえてくださったのが、六連島の自治会長さんである武島さんだ。見るからにやさしいおじいちゃんだが、お話ししていても島の空気を感じるような、あたたかさと凪のようなゆったりとした雰囲気を纏っている。

 

島の郵便屋さんでもある武島さんは、島の住民に郵便物を運んでいる

 

武島さんは島の出身で、勤め先の街の郵便局まで長年通っていたこともあり、今でも島の郵便物を委託され配達している。小さな島の郵便屋さん。なんてかわいらしい。

そんな武島さんの話によると、六連島はかつて山口県の春キャベツの生産地としてかなり栄えていたそうだ。40年位前までは、島のほとんどの土地がキャベツ畑だったという。

羽振りもよかったため豪快な男性陣が自分の船で夜な夜な街に繰り出す、なんていう夢物語のような話も現実にあったそうだが、それも今は昔。キャベツに病気が発生して痛みが出だしたことで、うまく育たなくなってしまったのだ。さらに、島の高齢化も重なり、キャベツ農業は次第に衰退していってしまう。

そこで始まったのが、菊の栽培だった。だんだん需要があるということがわかり、菊の季節以外に他の品種も植えるように。島の気候が花の栽培に適していたのか、今ではトルコキキョウ、ガーベラ、ひまわり、カーネーションなどが年中咲き誇る、一大生産地となった。

 

美しく咲くトルコキキョウ

 

せっかくなのでその花の栽培地も見せていただいた。案内してくださったのは生産者である植村さん。この広大なハウスの花たちを奥様と二人で育てているという。

 

島で花を育てている植村さん

 

少し強面ではあるが、忙しい中お話を聞かせてくださり、こちらもとてもあたたかい方だった。やはり島で生活すると、せかせかしたりイライラしたりすることがなくてやさしい人間になれるのだろうか。自分のことは棚に上げて、あの人もこの人も六連島に住めばいいのに、なんて思ってしまう。

植村さんのやさしさが垣間見えた瞬間がもう一つ、それは飼っている山羊を見せてくれたとき。雑草を食べてもらうために飼っているそうだが、「グルメなんだよ」と少し困った顔をしながら山羊のところに連れて行ってくれた。山羊さんは、植村さんが手にした出荷できないガーベラをむしゃむしゃ。とてもおいしそうに食べている・・・

なんて贅沢な!

 

草よりガーベラがお気に入りの山羊は、植村さんから奪い取るようにガーベラをほおばっていた

 

グルメで草よりガーベラを好む山羊たちを愚痴りながらも、やさしい顔でガーベラを食べさせている植村さんの横顔が印象的だった。

高齢化や、山の上にあるため水が少ないなど様々な問題を抱えつつも、大切に大切に花を育てている植村さん。美しい色彩の花を見ただけで、どれだけ大切に育てられているかわかる。

 

出荷前に冷蔵庫で保管される色とりどりの花たち

 

「3月4月の春がやっぱり一番盛況やけね。その頃にまた来たらいいよ」忙しいから、とインタビューを切り上げた植村さんだったが、結局最後までやさしかった。

 

六連島に住む男性陣のやさしさに触れ「島に住む人、いいかも」なんてすっかりほだされた私だが、六連島の魅力は住む人だけにおさまらない。例えば六連島のシンボルである、『六連島灯台』。

 

150周年を迎える、白く美しい六連島灯台

 

なんと今年150周年を迎え、重要文化財にも指定されている由緒ある灯台だ。10月には式典も予定され、島全体で地域おこしのようなことができたら、と武島さんは考えている。150年前と変わらない造形を今も変わらず見られるというのは、なんてロマンがあるんだろう。六連島灯台が見つめてきた150年に思いを馳せていたら、平気で一日過ぎていそうだ。

そう、そうなのだ。

 

高台にある神社から島を見守るようにたたずむ狛犬

 

そんな風に六連島では、花を見てはうっとりして時間を忘れ、高台に神社を見つけてはその景色に見とれて時間を忘れ、島の至ることろで心地よい風が吹いているので数分おきに立ち止まってしばらく身を任せていたくなる。

 

島のあちこちから海が見渡せ、行き交う船を眺めることができる

 

とにかくゆっくりとそこに留まっていたくなるのだが、いかんせん、宿がないのだ。いや、宿どころか、実は島にお店はなく、自動販売機が一台あるくらい。昔は売店もあり、民宿も2軒あったそうだが、高齢化もあり今は閉じてしまった。

昔は人口も200人くらいおり、30年位前までは分校もあったそうだが今はそれすらない。現在の人口は75人くらいだそう。世帯でいうと30ちょっと。

とはいえ、さみしいことばかりではない。今、六連島は島を盛り上げるために動き出している。8月からは、地域おこし協力隊を迎え、島で生活するそうだ。島民も協力体制が整っているということで、活性化が期待される。

 

船から見た、少しずつ小さくなっていく六連島

 

今はまだ、観光の島ではないけれど。私は六連島にポテンシャルしか感じない。売れる前からずっと好きだったのに、メジャーになってみんなが「いいよね」って言って少しさみしい気持ちになる、そんな予感がするのだ。

そう、今回の記事は、「だから言ったでしょ!」と言いたいがための自己満足でもある。島にみんなが押し寄せる前に、今だからこその“特別感”を、この記事を読んでくれたあなたにはどうか味わってほしい。

 

TEXT
忽那恵
関門オンエアでライティングを担当。

花と癒しの島、六連島

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下関駅からもほど近い渡船乗り場から、ほんの20分ほどで行ける小さな島がある。 [caption id="attachment_194" align="aligncenter" width="300"] 響灘の海にぽっかりと浮かぶ六連島[/caption]   『花の島』とも呼ばれる【六連島】。 島といえば海で泳いだり美味しい地元飯を堪能したり、バカンスを楽しむイメージがあるかもしれない。しかし、六連島は決して観光の島ではない。 今は、まだ。 そう感じさせてくれる、ポテンシャルを秘めた島であることは間違いない。まだまだこれから魅力が増しそうな六連島の、今だからこそ味わえる、素朴で穏やかで自分だけの特別な場所にしておきたい、そんな愛しい六連島をこっそりとご紹介したい。   [caption id="attachment_195" align="aligncenter" width="300"] 六連島自治会長の武島さん[/caption]   まず島について詳しくおしえてくださったのが、六連島の自治会長さんである武島さんだ。見るからにやさしいおじいちゃんだが、お話ししていても島の空気を感じるような、あたたかさと凪のようなゆったりとした雰囲気を纏っている。   [caption id="attachment_205" align="aligncenter" width="200"] 島の郵便屋さんでもある武島さんは、島の住民に郵便物を運んでいる[/caption]   武島さんは島の出身で、勤め先の街の郵便局まで長年通っていたこともあり、今でも島の郵便物を委託され配達している。小さな島の郵便屋さん。なんてかわいらしい。 そんな武島さんの話によると、六連島はかつて山口県の春キャベツの生産地としてかなり栄えていたそうだ。40年位前までは、島のほとんどの土地がキャベツ畑だったという。 羽振りもよかったため豪快な男性陣が自分の船で夜な夜な街に繰り出す、なんていう夢物語のような話も現実にあったそうだが、それも今は昔。キャベツに病気が発生して痛みが出だしたことで、うまく育たなくなってしまったのだ。さらに、島の高齢化も重なり、キャベツ農業は次第に衰退していってしまう。 そこで始まったのが、菊の栽培だった。だんだん需要があるということがわかり、菊の季節以外に他の品種も植えるように。島の気候が花の栽培に適していたのか、今ではトルコキキョウ、ガーベラ、ひまわり、カーネーションなどが年中咲き誇る、一大生産地となった。   [caption id="attachment_197" align="aligncenter" width="300"] 美しく咲くトルコキキョウ[/caption]   せっかくなのでその花の栽培地も見せていただいた。案内してくださったのは生産者である植村さん。この広大なハウスの花たちを奥様と二人で育てているという。   [caption id="attachment_198" align="aligncenter" width="300"] 島で花を育てている植村さん[/caption]   少し強面ではあるが、忙しい中お話を聞かせてくださり、こちらもとてもあたたかい方だった。やはり島で生活すると、せかせかしたりイライラしたりすることがなくてやさしい人間になれるのだろうか。自分のことは棚に上げて、あの人もこの人も六連島に住めばいいのに、なんて思ってしまう。 植村さんのやさしさが垣間見えた瞬間がもう一つ、それは飼っている山羊を見せてくれたとき。雑草を食べてもらうために飼っているそうだが、「グルメなんだよ」と少し困った顔をしながら山羊のところに連れて行ってくれた。山羊さんは、植村さんが手にした出荷できないガーベラをむしゃむしゃ。とてもおいしそうに食べている・・・ なんて贅沢な!   [caption id="attachment_199" align="aligncenter" width="300"] 草よりガーベラがお気に入りの山羊は、植村さんから奪い取るようにガーベラをほおばっていた[/caption]   グルメで草よりガーベラを好む山羊たちを愚痴りながらも、やさしい顔でガーベラを食べさせている植村さんの横顔が印象的だった。 高齢化や、山の上にあるため水が少ないなど様々な問題を抱えつつも、大切に大切に花を育てている植村さん。美しい色彩の花を見ただけで、どれだけ大切に育てられているかわかる。   [caption id="attachment_200" align="aligncenter" width="300"] 出荷前に冷蔵庫で保管される色とりどりの花たち[/caption]   「3月4月の春がやっぱり一番盛況やけね。その頃にまた来たらいいよ」忙しいから、とインタビューを切り上げた植村さんだったが、結局最後までやさしかった。   六連島に住む男性陣のやさしさに触れ「島に住む人、いいかも」なんてすっかりほだされた私だが、六連島の魅力は住む人だけにおさまらない。例えば六連島のシンボルである、『六連島灯台』。   [caption id="attachment_201" align="aligncenter" width="300"] 150周年を迎える、白く美しい六連島灯台[/caption]   なんと今年150周年を迎え、重要文化財にも指定されている由緒ある灯台だ。10月には式典も予定され、島全体で地域おこしのようなことができたら、と武島さんは考えている。150年前と変わらない造形を今も変わらず見られるというのは、なんてロマンがあるんだろう。六連島灯台が見つめてきた150年に思いを馳せていたら、平気で一日過ぎていそうだ。 そう、そうなのだ。   [caption id="attachment_202" align="aligncenter" width="300"] 高台にある神社から島を見守るようにたたずむ狛犬[/caption]   そんな風に六連島では、花を見てはうっとりして時間を忘れ、高台に神社を見つけてはその景色に見とれて時間を忘れ、島の至ることろで心地よい風が吹いているので数分おきに立ち止まってしばらく身を任せていたくなる。   [caption id="attachment_203" align="aligncenter" width="300"] 島のあちこちから海が見渡せ、行き交う船を眺めることができる[/caption]   とにかくゆっくりとそこに留まっていたくなるのだが、いかんせん、宿がないのだ。いや、宿どころか、実は島にお店はなく、自動販売機が一台あるくらい。昔は売店もあり、民宿も2軒あったそうだが、高齢化もあり今は閉じてしまった。 昔は人口も200人くらいおり、30年位前までは分校もあったそうだが今はそれすらない。現在の人口は75人くらいだそう。世帯でいうと30ちょっと。 とはいえ、さみしいことばかりではない。今、六連島は島を盛り上げるために動き出している。8月からは、地域おこし協力隊を迎え、島で生活するそうだ。島民も協力体制が整っているということで、活性化が期待される。   [caption id="attachment_204" align="aligncenter" width="300"] 船から見た、少しずつ小さくなっていく六連島[/caption]   今はまだ、観光の島ではないけれど。私は六連島にポテンシャルしか感じない。売れる前からずっと好きだったのに、メジャーになってみんなが「いいよね」って言って少しさみしい気持ちになる、そんな予感がするのだ。 そう、今回の記事は、「だから言ったでしょ!」と言いたいがための自己満足でもある。島にみんなが押し寄せる前に、今だからこその“特別感”を、この記事を読んでくれたあなたにはどうか味わってほしい。  

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下関駅からもほど近い渡船乗り場から、ほんの20分ほどで行ける小さな島がある。

響灘の海にぽっかりと浮かぶ六連島

 

『花の島』とも呼ばれる【六連島】。

島といえば海で泳いだり美味しい地元飯を堪能したり、バカンスを楽しむイメージがあるかもしれない。しかし、六連島は決して観光の島ではない。

今は、まだ。

そう感じさせてくれる、ポテンシャルを秘めた島であることは間違いない。まだまだこれから魅力が増しそうな六連島の、今だからこそ味わえる、素朴で穏やかで自分だけの特別な場所にしておきたい、そんな愛しい六連島をこっそりとご紹介したい。

 

六連島自治会長の武島さん

 

まず島について詳しくおしえてくださったのが、六連島の自治会長さんである武島さんだ。見るからにやさしいおじいちゃんだが、お話ししていても島の空気を感じるような、あたたかさと凪のようなゆったりとした雰囲気を纏っている。

 

島の郵便屋さんでもある武島さんは、島の住民に郵便物を運んでいる

 

武島さんは島の出身で、勤め先の街の郵便局まで長年通っていたこともあり、今でも島の郵便物を委託され配達している。小さな島の郵便屋さん。なんてかわいらしい。

そんな武島さんの話によると、六連島はかつて山口県の春キャベツの生産地としてかなり栄えていたそうだ。40年位前までは、島のほとんどの土地がキャベツ畑だったという。

羽振りもよかったため豪快な男性陣が自分の船で夜な夜な街に繰り出す、なんていう夢物語のような話も現実にあったそうだが、それも今は昔。キャベツに病気が発生して痛みが出だしたことで、うまく育たなくなってしまったのだ。さらに、島の高齢化も重なり、キャベツ農業は次第に衰退していってしまう。

そこで始まったのが、菊の栽培だった。だんだん需要があるということがわかり、菊の季節以外に他の品種も植えるように。島の気候が花の栽培に適していたのか、今ではトルコキキョウ、ガーベラ、ひまわり、カーネーションなどが年中咲き誇る、一大生産地となった。

 

美しく咲くトルコキキョウ

 

せっかくなのでその花の栽培地も見せていただいた。案内してくださったのは生産者である植村さん。この広大なハウスの花たちを奥様と二人で育てているという。

 

島で花を育てている植村さん

 

少し強面ではあるが、忙しい中お話を聞かせてくださり、こちらもとてもあたたかい方だった。やはり島で生活すると、せかせかしたりイライラしたりすることがなくてやさしい人間になれるのだろうか。自分のことは棚に上げて、あの人もこの人も六連島に住めばいいのに、なんて思ってしまう。

植村さんのやさしさが垣間見えた瞬間がもう一つ、それは飼っている山羊を見せてくれたとき。雑草を食べてもらうために飼っているそうだが、「グルメなんだよ」と少し困った顔をしながら山羊のところに連れて行ってくれた。山羊さんは、植村さんが手にした出荷できないガーベラをむしゃむしゃ。とてもおいしそうに食べている・・・

なんて贅沢な!

 

草よりガーベラがお気に入りの山羊は、植村さんから奪い取るようにガーベラをほおばっていた

 

グルメで草よりガーベラを好む山羊たちを愚痴りながらも、やさしい顔でガーベラを食べさせている植村さんの横顔が印象的だった。

高齢化や、山の上にあるため水が少ないなど様々な問題を抱えつつも、大切に大切に花を育てている植村さん。美しい色彩の花を見ただけで、どれだけ大切に育てられているかわかる。

 

出荷前に冷蔵庫で保管される色とりどりの花たち

 

「3月4月の春がやっぱり一番盛況やけね。その頃にまた来たらいいよ」忙しいから、とインタビューを切り上げた植村さんだったが、結局最後までやさしかった。

 

六連島に住む男性陣のやさしさに触れ「島に住む人、いいかも」なんてすっかりほだされた私だが、六連島の魅力は住む人だけにおさまらない。例えば六連島のシンボルである、『六連島灯台』。

 

150周年を迎える、白く美しい六連島灯台

 

なんと今年150周年を迎え、重要文化財にも指定されている由緒ある灯台だ。10月には式典も予定され、島全体で地域おこしのようなことができたら、と武島さんは考えている。150年前と変わらない造形を今も変わらず見られるというのは、なんてロマンがあるんだろう。六連島灯台が見つめてきた150年に思いを馳せていたら、平気で一日過ぎていそうだ。

そう、そうなのだ。

 

高台にある神社から島を見守るようにたたずむ狛犬

 

そんな風に六連島では、花を見てはうっとりして時間を忘れ、高台に神社を見つけてはその景色に見とれて時間を忘れ、島の至ることろで心地よい風が吹いているので数分おきに立ち止まってしばらく身を任せていたくなる。

 

島のあちこちから海が見渡せ、行き交う船を眺めることができる

 

とにかくゆっくりとそこに留まっていたくなるのだが、いかんせん、宿がないのだ。いや、宿どころか、実は島にお店はなく、自動販売機が一台あるくらい。昔は売店もあり、民宿も2軒あったそうだが、高齢化もあり今は閉じてしまった。

昔は人口も200人くらいおり、30年位前までは分校もあったそうだが今はそれすらない。現在の人口は75人くらいだそう。世帯でいうと30ちょっと。

とはいえ、さみしいことばかりではない。今、六連島は島を盛り上げるために動き出している。8月からは、地域おこし協力隊を迎え、島で生活するそうだ。島民も協力体制が整っているということで、活性化が期待される。

 

船から見た、少しずつ小さくなっていく六連島

 

今はまだ、観光の島ではないけれど。私は六連島にポテンシャルしか感じない。売れる前からずっと好きだったのに、メジャーになってみんなが「いいよね」って言って少しさみしい気持ちになる、そんな予感がするのだ。

そう、今回の記事は、「だから言ったでしょ!」と言いたいがための自己満足でもある。島にみんなが押し寄せる前に、今だからこその“特別感”を、この記事を読んでくれたあなたにはどうか味わってほしい。

 

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忽那恵
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日本初がたくさんある?出土品からわかる当時の生活様式とは?『下関市立考古博物館』をご紹介!-Part5-
下関市内の弥生・古墳時代の遺跡で出てきた出土品から市内の歴史について学べる『下関市立考古博物館』でお話を伺いました👂
 
まだあった日本初!
日本で初めて発掘された恐竜の卵の化石が下関に🦕
日本で初めて遺跡に関する裁判が行われた
など今回もトリビア満載です
日本初がたくさんある?出土品からわかる当時の生活様式とは?『下関市立考古博物館』をご紹介!-Part4-
下関市内の弥生・古墳時代の遺跡で出てきた出土品から市内の歴史について学べる『下関市立考古博物館』でお話を伺いました👂
 
今回は綾羅木郷遺跡から発掘された弥生時代の土器や石器から当時の暮らしや技術を学んでいきます
食器や包丁の形、文様などから何でもわかる
日本初がたくさんある?出土品からわかる当時の生活様式とは?『下関市立考古博物館』をご紹介!-Part3-
下関市内の弥生・古墳時代の遺跡で出てきた出土品から市内の歴史について学べる『下関市立考古博物館』でお話を伺いました👂
 
日本で初めて発見されたという土笛のレプリカを手に、まだまだ展示室の案内は続きます🧐
他にも日本で初めて下関の遺跡から発見されたものが登場
日本初がたくさんある?出土品からわかる当時の生活様式とは?『下関市立考古博物館』をご紹介!-Part2-
下関市内の弥生時代・古墳時代の遺跡で出てきた出土品から市内の歴史について学べる『下関市立考古博物館』でお話を伺いました👂
 
中編ではいよいよ展示室へ!
下関は日本初のものが多いそうです👀
日本で初めて発見された楽器も
 
そして古墳時代のお墓の秘密とは…
日本初がたくさんある?出土品からわかる当時の生活様式とは?『下関市立考古博物館』をご紹介!-Part1-
気になる歴史施設で展示資料からわかる関門地域の歴史や人の想い・考え方について学ぼう📝
 
今回は、下関市内の弥生時代・古墳時代の遺跡から出てきた出土品から市内の歴史について学べる『下関市立考古博物館』におじゃましました!
 
弥生時代の人たちの生活とは🧐
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